イベントと勉強会の違い

「イベントではなく勉強会です」。東京ブロガーミートアップが炎上しているようだ。(しかし、アフィリエイトサービスのA8.netを提供するファンコミュニケーションズが登場しているので、炎上マーケティング大成功なのかとか、多少思ってる)

事の発端は、こちらのブログで運営体制を批判されたこと。
・イベントを開催するという事は人の時間を預かるということ→あまりにも素人仕切りの【第22回東京ブロガーミートアップ】

これに対して、運営側が反論し、火に油を注ぐ形になってしまった。
・東京ブロガーミートアップにつきまして

ネットの感想を見ていると、双方に対して共感する意見が半々位なのではないかと思う。私もイベントや勉強会を主催することもあるし、参加することもあるのでどちらの言い分も理解出来る。なんとなく内輪のノリではじめた「勉強会」が、気がつけば企業協賛のつくような規模になってきてしまい、主催側と参加者の間で期待するもののギャップが広がってしまったということではないかと思う。ここまで批判されるようになったということは、それだけ参加者側の期待値も高まってきたということなのだろう。今後も更に成長させていくのなら「勉強会主催者」から「イベント運営」という視点に切り替える時期に差し掛かっているのかもしれない。それはそれで、光栄なことなのではないかと思う。

イベントと勉強会の違い

ネット上の感想を見ていると「勉強会とイベントって何が違うの?」という意見が散見された。この件に関して「イベント」と「勉強会」双方を主催している人間として私見を述べてみたい。

「イベント」 = 営利活動を求める物

まず、「イベント」という名の付くものを開催するには、「コスト」と「準備期間」がかかる。規模にもよるが100名集客を想定するレベル感だと、準備期間2~3ヶ月、予算150万円位は最低ラインとして見る必要がある。もちろん安くする方法は幾らでもあるが、当日運営スタッフ、会場、ノベルティ、事務局の運営など「企業」としての「質」を提供するには、それなりのお金がかかるのだ。

よって、イベントを開催するには当然、その後幾ら利益に繋がるのかという計画も作成することが求められる。来場者何人に対して、案件に繋がるのはこの位と言った風にだ。

・「イベント」の問題点
しかし、常に「営利活動」を求めるイベントばかりでは、企業活動において支障が出つつあると感じている。

 1) 収益貢献が不明確なイベントは開催出来ない
 マーケットが存在しない物に対して市場の反応を見たいとするような場合には、「収益貢献の計画」を立てることが出来ない。例えば、ウェアラブルに興味関心はあっても、今の段階で数百万円かけてイベント集客をして意味があるのか?という状態になる。結果として、企業としての新しい取り組みを市場にアピール出来なくなってしまう。

 2) 「旬」なテーマを逃してしまう
 イベント開催には多くのステークホルダーとの調整が必要になるので、準備期間が必要になる。企画当時に集客が見込めると思ったテーマが半年後の開催時にはインパクトがなくなってしまったなんていうことも、起きてしまう。

 3) 「売り上げ」に繋がらない顧客は「顧客」で無くなってしまう
 BtoCでも、BtoBでも2割の顧客が8割の売り上げを支える「ロングテール現象」というのは良く起きる。「あまり買ってくれない人達」に社内のリソースを割くより、「良く買ってくれる人達」にリソースを割くほうが効率が良いからだ。こういった「良く買ってくれる人達」を対象とした「CEO向けイベント」などを開催するのが流行っていたりするが、一方でそういうイベントに招かれない企業との関係は薄くなってしまう。一部の「お得意様」を対象としたビジネスはその「お得意様」との関係が良い間は、好調に推移するが、途端に関係が悪くなる、あるいはお得意様の業績が不振になると、影響をこうむってしまう。

勉強会 = 「顧客との関係を強化する」

どこの企業も「新規顧客」を獲得する有効手段として「イベント」を開催している。しかし、上述した通りイベント開催には企業としての「ブランドイメージ」への配慮も考えねばならず、開催にはパワーが必要となり、その結果「イベントだけで良いのか?」という疑問も感じるようになった。

そこで、「もっと気楽に」「売り上げではなく、関係を強化する」ことを目的とした、「場」を作れないか?そう考えて今期は「勉強会」を開催するようにした。今月で既に四回目の開催となる。

プロのイベント運営会社に委託する「イベント」とは異なり、こちらは手弁当。懇親会の準備などは来場頂いてる方にもお手伝い頂いたりしている。その代わりケータリング費は弊社が負担しているが。「無料で飲食までしてしまうと気を遣って参加出来ない」という人達も中には居るので、この「準備を手伝って貰う」という行為には「営業」という場ではなく、「フラットに会話出来る場所」という趣旨を伝えるための「演出」の意味もある。

既に三回開催して、営業からは「勉強会」というスタイルを歓迎する声も上がっている。

 1) 自分達も勉強になる
 担当顧客ばかりを向いていると、ついつい世の中のトレンドを追いきれなくなってしまう。自分達としても勉強になるとのこと。

 2) 接点の無かったお客様を誘う口実が出来た
 大手の顧客には、メーカの専属チームや、他社のSIerががっちり脇を固めていて、おいそれと商談の話は出来ないなんてことは多々ある。しかし、商談とは全く関係ない「こんな勉強会があるんので、ご興味あればご参加ください」と挨拶代わりに、話を切り出せるようになっている。しかも、毎月あるので、誘うタイミングは一年中あるということだ。

イベントでは対応しきることの出来なかった「ロングテール」の顧客基盤維持という観点で、低コスト、高頻度で開催可能な「勉強会」というスタイルには、一定の手応えを感じている。

「イベント」「セミナー」でプリセールス、「勉強会」はポストセールス

下期には、案件獲得を目的とした「セミナー」も開催する予定だ。「イベント」「セミナー」「勉強会」を以下のように定義付けている。

 ・イベント
  特定の製品、ソリューションに関心のある層へのリーチする場。メルマガ、セミナーへの導線。
  新規リード獲得(強い)。集客人数は100名規模(質より量)。準備、開催にかかるコスト大。

 ・セミナー
  特定の製品、ソリューションに関心の高い層への「一押し」をする場。
  新規リード獲得(とても強い)。集客人数は10名規模(量より質)。準備、開催にかかるコスト低。

 ・勉強会
  既存顧客との関係強化が主目的。新規開拓は副産物。売り込みより人間関係の強化が目的。
  新規リード獲得(低い)。集客人数は50名規模。準備、開催にかかるコスト低。

上記はあくまでも、私の考えであり、他の企業や運営者の考えは違うかもしれない。ただ、企業のマーケタが企画に関わるイベントや勉強会などに、求める結果等は違うことが多いと思う。参加する際にこういった背景の違いを理解していると「なんか友達に誘われたイベントに参加したら営業から電話かかってくるようになって、うざい」といったような主催側の狙いと、集客された側のギャップから生まれる「不快感」は避けられる確立が高くなるだろう。



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プロフィール

大元隆志(おおもと たかし) 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。異なるレイヤーの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。Yahoo!ニュース講談社 現代ビジネスCNET翔泳社EntepriseZineITmedia マーケティングITイニシアティブ、等、様々なIT系メディアで活躍する。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。