APIをビジネス視点で考えてみる

スタートアップの皆さんはサービスを作られる際にTwitterやFacebook、GoogleなどのAPIを利用することが多いと思います。これらの企業はAPIをオープンにすることで巨大なエコシステムを構築し、自らのプラットフォームの価値を高めているというのは皆さんご存知のことだと思います。

そこで今回は、この「API」について考えてみたいと思います。

■ エコシステムとは?
そもそもエコシステムとは何なのでしょうか?下の図はTwitterのエコシステムを表現したものです。ちょっと小さくて見づらいですが、Twitterを中心(キーストーン)として、さまざまなサービス(ニッチ・プレイヤー)がビジネスネットワークを形成していることが分かります。その分野も「位置情報」「マーケティング」「ソーシャルCRM」「リッチメディア」など多様です。
 

 
そもそもTwitterは「家族や友人が別々の場所にいる時に楽しめるもの」をコンセプトに開発されたものです。それが今では実に多くのサービスを創出し、新しいイノベーションが次々と起こっています。このように個々のサービスがお互いに共生しながら多様化していくのがエコシステムです。
 
■ なぜエコシステムの形成が重要なのか?
それではなぜエコシステムの形成が重要なのでしょう。いろいろ原因は挙げられると思いますが、私は以下の2つが大きく影響していると思います。

  • ビジネス環境の変化
  • 技術のコモディティ化

まずビジネス環境の変化ですが、ソーシャルメディアの普及によって人々のインタレストグラフ(興味関心のつながり)は急速にフラグメント化し、マーケットはグローバル(一方でハイパーローカル)になっています。また、スマートデバイスの進化によって消費者のライフスタイルは急変しており、従来のように「市場調査」「ターゲティング」「計画」「開発」というサイクルに時間をかけていては変化のスピードに追いつけないでしょう。このような不確実性の高い環境の中では、それぞれのサービスがお互いに資源を共有し、迅速かつ柔軟に対応していくことが重要になってくると思われます。
 
次に技術のコモディティ化ですが、今はあらゆる技術がオープンな時代です。昔のように一つの企業が技術を独占する時代ではなくなってきています。また、開発ツールやフレームワークが充実することによって、生産性・開発容易性は格段に向上しています。クラウドの普及もインフラの初期投資コストを大幅に下げ、新規参入のハードルを下げています。このような中では独自技術による競争優位性というものを作り出すことは難しく、代替サービスによる脅威に常にさらされることになります。この脅威から身を守るには、それぞれのサービスが共生してお互いの付加価値を高めていき、ネットワーク全体としての競争優位性を構築していくことが重要ではないでしょうか。
 
■ APIがエコシステムに果たす役割とは?
それではエコシステムを形成し、その価値を高めていくのに重要なポイントは何なのでしょう?
エコシステムの健全性を計る指標として「キーストーン戦略」の著者であるM.イアンシティとR.レヴィエンは以下の3つを挙げています。

  • 生産性
  • 堅牢性
  • ニッチの創出

つまり、これらを高めることが重要なポイントになるわけですが、私はこれにはAPIの存在が必要不可欠であると考えています。RestfulなAPIは呼び出しも簡単ですし、様々なプラットフォームに対して互換性を保つことができます。また、OAuthのような仕組みを使えば手軽に一定の安全性を確保することもできます。そして何よりAPIの存在は、多くのマッシュアップを生み出す源泉となるのは、最近Twitterのサードパーティー製アプリの数が100万を超えたという事実からも明らかです。
 
■ APIをビジネスに活用する
ここまでAPIをエコシステムという視点で見てきましたが、実際にビジネスにどのように活用できるのか考えてみたいと思います。
 
1.ビジネス開発をアウトソースする
自分たちのサービスを新しい市場に広げていくことは、消費者のニーズが多様化する現代では、時間もコストも非常にかかります。特に資金力のないスタートアップにとってはなかなか難しいでしょう。しかし、APIをビジネスパートナーや一般の開発者に提供し、彼らにもビジネス開発を行ってもらうことにより、自分たちのサービスを効率的に広げることができるかもしれません。(ただし、過度にAPIを提供してしまうとビジネス的なリスクになる場合もあります。自分のサービスのビジネスモデルに影響を与えないかどうか、どこでマネタイズを行うかどうかをなどを見極めた上で提供する範囲を決めた方が良いと思います。)
 
2.ブランディング
APIはWebやその他様々なチャネルへのアプローチを可能とします。特にブランド力のないスタートアップにとって、より多くの人に認知してもらうことは、ビジネスの可能性を大きく広げることにつながります。(全くコネクションがない企業とアライアンスを組むキッカケになったりします。)
 
3.マネタイズの方法が増える
APIは広告、ライセンス販売、アフィリエイト、レベニューシェアなど様々な方法でマネタイズが可能です。特に情報・商品のリスティングがコアビジネスなのであれば、APIを自分のビジネスモデルの中核として考えた方が良いと思います。(APIはデータのシンジケーションに非常に向いています。)

参考までにAPIのビジネスモデルをまとめた図が以下になります。(via programmableweb)
 

 
以上、簡単ではありますが今回はAPIについて考えてみました。APIを公開するということはセキュリティやスケール、ユーザーサポート、バージョン管理など様々な事を考慮しないといけないので敷居が高いのは確かです。一方でアメリカを見ると非常に多くのスタートアップがAPIを公開し、そこから新しいイノベーションが次々と起こっています。(アメリカでは「Mashery」や「3scale」のようにAPIの管理を行ってくれるサービスを利用するケースもあるようです)
今後APIは「nice to have」から「need to have」の時代になっていくと思います。今回の記事を通してスタートアップの皆さんがAPIをコアビジネスの配信チャネルの1つとして考えるきっかけになれば幸いです。(何より日本の素晴らしいサービスがいろんなところでマッシュアップし、新しいイノベーションが次々と起こったらと思うとワクワクしませんか?)
 
 
(おまけ)
以下のサイトからAPIに関するホワイトペーパーをダウンロードできます。APIの注意点など有用な情報が載っていて非常に参考になりますので、是非読んでみて下さい。
http://apigee.com/about/resources

プロフィール
本田 雄三(ほんだ ゆうぞう)
主にWeb系の開発を行っています。 「ソーシャルメディア」、「スタートアップ」、「スマートフォン」、「クラウド」関連の情報をちょっぴり技術寄りな視点で発信していきたいと思います。



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